2014.12.25
設計の池田です。
先日Panasonic汐留ミュージアムで開催されていた「ピエール・シャローとガラスの家」展に行ってきました。
ピエール・シャローは第1次世界大戦と第2次世界大戦の間の短い期間に活躍した建築・家具・インテリアデザインの多岐にわたる分野で才能を発揮した人物です。
シャローは最初、建築家を目指し国立の大学院を受験しましたが合格に至らず、家具制作の会社に就職し、頭角を現します。
家具に可動性を持たせることを考え、折り畳み式のサイドテーブルや光源の位置を自在に調整できるデスクライト等を手掛けました。
1925年のパリ万国博覧会でそれらが大きな評価を得て、次第にインテリアデザインや建築へと活動の領域を広げて行きました。
そして生まれた傑作が「ガラスの家」と呼ばれる作品です。
医師であるクライアントの為に作られた、当時の最先端の工業製品であるガラスブロックと鉄で構成されたモダンな医院兼住宅です。
そしてこの住宅の驚くべき点は何とリノベーション物件なのです。
元々は18世紀に作られたアパートでした。
当初このアパートを建て壊し新築する予定でしたが、3階に住む住人が退去を拒否した為、1、2階をくり抜き文字通りすっぽりはめ込んだような形で作られたのです。
石造りのアパートを鉄骨の柱だけで支え、くり抜いています。
今の技術で考えてもこんな工事の依頼は怖くて受けたくありませんから当時はもっと計り知れない苦労と検討を重ねた事でしょう(笑)
実際にこの家は設計に3年、工事に3年の計6年かけて作られています。
3方を建物に囲われた状態のこの建物で1、2階の採光を得るため少し手前に張り出した形で作られました。
天井高さを確保するため、半地下の形で1階部分を掘り下げています。
内部はガラスブロックの壁のおかげで驚くほど明るく開放的な空間になっています。
昼間は太陽光で照らされるのは勿論ですが、なんと夜間は外部につけられた投光器を使い明るさを演出していたとか(笑)
解体時に上部のアパートを支えていた鉄骨の柱も塗装されそのまま内部の意匠に取り込まれています。
この住宅は多くの建築家に影響を与え、今日活躍している世界的建築家らもこの家の影響を受けたと公言しているほどです。
現代で見ても驚くほど洗練された住宅ですので当時の衝撃は想像すらできません。
私たちもリノベーションの依頼を受けていますが、ここまでとは行きませんがただの内装提案にとどまる事無く、しっかりとした提案が出来るように努力していきたいと思いました。