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2013.8.29

アイカ現代建築セミナー 安藤忠雄 「生き残りを賭けて」

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先日有楽町のよみうりホールで行われたアイカ現代建築セミナーを聞いてきました。
今回の講演者は世界的に有名な建築家の安藤忠雄氏でした。

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氏については特に説明が必要ないほど一般の方にもよく知られているかと思いますが、
氏の講演は(大阪の出身という事もあり?)柔らかい語り口で、クスっとする場所をところどころに作ったりと
聞いている人間を飽きさせないような講演でとても面白いという事はご存知でしょうか?

今回の講演は氏の40年以上の建築家の活動の中の代表的な作品「住吉の長屋」からはじまり、
「六甲の集合住宅」、「表参道ヒルズ」等の設計過程や姿勢、クライアントとの関わり方、
近隣の住民との関わり方などをお話しになっておりました。

まず最初に氏の名前を一躍有名にしたのが「住吉の長屋」です。

住吉の長屋.jpg

これは大阪市の住吉地区に建つ長屋のちょうど真ん中の部分の建て替えの依頼でした。
長屋と言うのは壁を共有していますから当然真ん中だけをポンと壊してポンと建てるわけにもいきません。
両脇の建物は敷地境界ギリギリの所で切断しますので施工の為の空きもほとんど取る事が出来ませんし、
共有している壁や柱を取り払えば残す方の長屋も崩れてしまう事があるかもしれません。
そんな難しい環境と限られた予算の中での設計は困難を極めたと言います。

そして、1979年にこの住吉の長屋は日本建築学会賞を受賞しました。
こうして有名になった事で、小さな建物の真ん中に中庭を開けて2つの住棟に分けている為、
「雨の日に傘をさしてトイレに行くのか」や「コンクリートの打ち放しで暖房も冷房も無く、
快適に過ごす事なんて出来ない」などの批判も上がりましたが、氏はまったく気にならなかったと言います。
確かに住まう環境としてはもっと快適にする方法は多くあったと思いますが、
施主の方が今も中庭から見える空や風を楽しんで住んでおられると言う事が、
この建築の一番の正しい評価なのだと思います。

「住吉の長屋」に続き紹介していたのは「六甲の集合住宅」でした。

六甲の集合住宅.jpg

この集合住宅は急こう配の斜面に沿うように建っていますが、実は依頼を受けた当初はこの斜面では無く、
下の平地に建ててほしいという依頼だったそうです。
もともとこの斜面の部分も含めての土地だったのですが最大60度の急な斜面ともともと崩れやすい地質の斜面で
施主はもともとこの斜面の部分は使う事をあきらめていたそうです。
当時、斜面建築に興味を抱いていた氏は依頼を受けて現地に案内され平地部分の説明を受けている間、
ずーっと斜面の方を見ていたと言います。

こうして設計された斜面建築でしたが、施工者がなかなか決まりませんでした。
なぜなら60度もの斜面での工事はリスクが高く手を上げる大手のゼネコンはほとんどありませんでした。
実際に工事が始まっても工事は苦難の連続だったといいます。
そんな苦難を乗り越えて出来あがった「六甲の集合住宅」は高低差を生かした個性豊かな住戸が集まる
とても魅力的な建物になりました。
そしてこの完成した建物を見て、「うちの斜面にも建ててくれ」と周囲の斜面を持っている地主の人々からの
設計依頼が多く寄せられ、この一帯は安藤建築が建ち並びました(笑)

六甲の集合住宅2.jpg

写真下が六甲の集合住宅1期。中段が2期、左上が3期と斜面全体を覆うように出来ている事が分かりますね(笑)

長くなりましたので、続きは次回に。

池田大基

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