2013.7.15
先日、建築家、清家清先生が設計し、約40年の間オーナーに愛され、住まわれていた保土ヶ谷区の上星川にある住宅の一般公開があり、参加してきました。
「保土ヶ谷の家」と言っても、分からない方も多いと思いますが、「ダバダ~」の歌声と「違いの分かる男」のキャッチコピーでおなじみのコーヒーのCMに清家先生が出演された時に使われた家と言うとある年齢以上の人には分かる方もいるかもしれません。(笑)
保土ヶ谷の家は、上星川の駅から坂を上り切ったクヌギ林の中にあります。
敷地は全体的に斜面になっており、この斜面にそっと寄り添うような形でやや控えめな表情で建っています。
正方形の平面が崖の斜面に対して斜めに振られていて、この斜面に逆らう事なく作られた床のスキップフロアと大きな吹抜けがとても気持ちの良い空間を作り上げています。
崖側に向いた大きなFIX窓の下には扉がつけられた換気口があり崖を登る心地よい風を家全体に回す為の工夫がなされています。
40年経つ今でもとても古さを感じさせない素晴らしい空間でとてもゆったりとした時間が流れていました。風に揺れるクヌギの葉を眺めていると何時間でも過ごせてしまうように感じます。
中では建設当時の写真や設計図などを閲覧することもでき、とても貴重な体験ができました。
さて、通常個人の財産である一般住宅が公開される事はほとんどありません。この保土ヶ谷の家がなぜ一般公開されたかと言うと、これには訳があります。
実は前オーナーがお亡くなりになられた事で、相続が発生しました。
大きな敷地であった事もあり税金を納める為に一度は解体して売却される危機が起ったのです。
これは現オーナーや関係者の方々の尽力により土地の半分を生産緑地として横浜市に譲り渡す事で再生、保存を目指す事になり切り抜けました。
しかし40年の月日に家はすぐにでも大規模な修繕が必要な状態にあります。
この修繕にはとても大きなお金がかかります。この費用を捻出するためと現オーナーの「人の声が聞こえなくなると家はダメになる」という考えから「地域のたまり場」として整備し、横浜市や神奈川県の補助金を活用した再生、保存の道を探っていました。
しかし、補助金を活用するためにはバリアフリーの対応(スロープやEVの設置)や消防法に合わせた避難誘導灯の設置などを行う必要がありました。
(そもそもスキップフロアの住宅だったのでスロープの設置も難しいですが)この整備を行えば清家先生の設計したオリジナルから大きな変更を加えなければならない為にこの計画も頓挫している状況になっています。
この保土ヶ谷の家の再生、保存をする為に広く意見や提案をもらう為に、今回一般公開されたのです。
現在もこの家は再生の為の工事をすぐにでもしなければならない状況にあります。
こういった問題は我々建築従事者だけでなくもっと広く知恵を募らなければ難しい問題です。
もし、何かお知恵があればどんな事でも構いません。
是非お知らせください。
池田大基