2014.10.14
設計の池田です。
先日、目黒区美術館で行われている「ジョージ・ネルソン展」に行ってきました。
ご存じの方も多いと思いますが、ジョージ・ネルソンは20世紀アメリカが生んだ偉大なデザイナーの一人です。
ボールクロックや、マシュマロチェア等は今なお、多くの人の憧れの家具の一つです。
このような優れたデザインを数多く生み出しましたが、ネルソンの才能はそれだけにとどまらず
建築やグラフィック、展覧会等の様々な分野でその手腕を発揮しました。
壁掛けの時計の文字盤を初めて無くしたのは実はネルソンでした。
ネルソンは人が時計を見る時の動作に注目し、分析したところ
「人は時計を見る時に文字盤の数字を確認しているのではなく、針の位置を見ているのだ」と言う事に気が付き、
文字盤の無い時計を生み出したのです。
普段当たり前のように思っている一つの物についても深く考える事で真理を読み解きそれをデザインし直したのです。
実は当時、腕時計等が普及し始め、壁掛けの時計の需要は落ち始めていました。
しかし、ネルソンが文字盤の無い時計をデザインした事で、壁掛けの時計は時間を知るツールから
インテリアの家具として新たな需要につながって行ったのです。
デザインする事で物に新たな価値を与えるというネルソンの類稀なる才能を表す話の一つですね。
ネルソンのもう一つの代表的な家具と言うとバブルランプがあげられると思います。
当時、照明器具は北欧製のシルク張りのセードが使われた高価な物が主流でした。
これを安価にするためネルソンは針金で作った骨組みに、当時アメリカ軍が廃船の保存の為に開発した装置で
プラスチックを吹付けて作る事を考えたのです。
これにより安価に作る事が出来た上、シルク張りでは不可能な複雑な曲面を持つ照明器具が出来上がったのです。
ネルソンは住宅の設計にもその才能を発揮しました。
1941年にネルソンがニューヨークで設計したシャーマン・フェアチャイルド邸は、
短冊状の細長い敷地の中央に中庭を計画して通風や採光を確保し、スロープで半階ごと上がっていく
スキップフロアの形式をとりました。
構成がとても日本の町屋に似ているのは偶然なのでしょうか?(笑)
70年経った今でも斬新さを感じるプランはさすがとしか言いようがありません。
こうした素晴らしい作品を数多く生み出したネルソンは、そのプロダクトデザイン製品のカタログのデザインにも力を入れました。
それは何故かと言うと、当時は家具などは一般のユーザー向けにはあまり販売されておらず、
建築家やデザイナー等が選定し、手配していた為、そのデザインに関心の高い人向けのデザインされたカタログを制作し、
その目に止まりやすくしたのです。
ネルソンはデザインの才能だけでなくそういった商売の才能まであったのですね(笑)
実は開催されている目黒区美術館も隠れた名建築であります。
皆さんも一度足を運んで見てはいかがでしょうか?