都内の閑静な住宅街にある邸宅。奥さまの仕事場を兼ねたこの邸宅の最も大きな特徴は、一般的にひとつの空間であることが多いリビングとダイニング・キッチンが別のフロアに分かれていることです。来客があっても家族が気兼ねなく寛げるよう、1階をパブリック空間、2階をプライベート空間として完全に分離した空間構成となっています。
1階は料理教室として使うことを想定し、集まった生徒さんが囲める大きなキッチンと、大勢で食事を愉しめるダイニング、アウトサイドリビングとなる中庭があります。そして2階にはご夫婦のプライベートなリビングと、寝室、客間や水廻りを配置しました。1階と2階では仕上げも大きく変え、空間デザインでオンオフの切り替えを促すような計画となっています。中庭は1階、2階を繋ぐハブとして機能すると同時に、邸宅の隅々に光と風を届けます。
どこに居ても明るく、風の通る気持ちの良いこの家には、今日も沢山の人が集います。
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「houzz ベスト・オブ・ハウズ2018デザイン賞」受賞
「ハイクオリティビルド」認定
シンプルな白い壁に黒い御影石の素材感が際立つ、モダンな外観。玄関正面の道路側に壁を設けることで、セキュリティーにも配慮したデザインです。
曲線を描く框が特徴的な玄関ホール。玄関を上がるとすぐ階段があり、階段を上るとプライベートなリビングに、階段を上らずに右手に進むと料理教室のためのダイニング・キッチンに至ります。窓の外に広がるのは中庭。玄関はいつも明るく、季節の彩に満ちています。
ダイニング側から玄関ホールの折り返し階段を望む様子。スケルトン階段は中庭からの光を遮ることなく1階に落とします。
白いタイルの床に白い漆喰壁を合わせた、輝くような明るいダイニングキッチン。様々なテイストのテーブルコーディネートが映えるよう、シンプルに仕上げました。3.4mの高天井と中庭への大きな窓の効果で、面積以上に広々と、開放的に感じられます。奥にある全長5mに渡る特注のアイランドキッチンが存在感を放っています。
多数の食器を所有されているというお話を受け、ダイニングの壁際に沿って、食器を収納するための大きな造作棚をつくりました。棚は壁付けとなっています。下には間接照明を仕込み、浮遊感を強調しています。
料理教室のレッスンに使用する特注キッチン。一般的な住宅では見かけることのない大きなサイズは大勢で囲むことを想定し、オーナー様が家を建てる前からポーゲンポール社にて製作を進めていたもの。「このキッチンが入る家を建てたい」という言葉が、オーナー様からの最初のご要望でした。
料理をサーブすることを考え、キッチンからダイニングへの動線、時にアウトサイドリビングとなる中庭への動線を緻密に計算した上で、間取りを決めていきました。
大容量の収納と作業効率、必要な設備をすべて考慮して計画されたポーゲンポールのキッチン。天板の段差はコンロで鍋を振る時や洗い物、材料を切り料理を盛り付けるなどそれぞれの作業に合った高さにあわせるためのものです。目的の異なる水栓は3種類設置。ビルドインのオーブンやコンロはガゲナウのものを採用しました。
アウトサイドリビングとして、食事の場にもなる中庭。天候の良い日には頻繁に活用されています。花壇には竹を植えていますが、時々筍を収穫し料理に使ったりもするそうです。
キッチン横に作った来客用の洗面室は、キッチンと揃えたデザインに。埋め込み型のペーパーホルダーやゴミ箱など、すっきりと見せるための工夫が盛り込まれています。
2階のプライベートリビング。パブリックスペースでもある1階とは意匠の趣を変え、ブラックウォールナットを用いて落ち着いた雰囲気に仕上げました。奥には小さなバルコニーがあります。
非日常感を愉しめる、黒いタイルの浴室。脱衣室との間はガラス張りとなっています。
大きな窓から中庭の竹を望む2階の和室。客間や茶室として計画しました。襖のデザインや琉球畳など、モダンな要素を盛り込んだ美しい空間です。
リビングと隣接した寝室は、インテリアにも連続性を持たせました。中庭の竹が窓いっぱいに広がり、清々しい景色を楽しむことができます。
夕暮れ時、2階寝室から和室を望む様子。室内の灯りが中庭を柔らかく照らし、美しい景色を見せてくれます。
中庭を介して全ての空間が緩やかに繋がります。