神奈川県 M様/2014年 お引渡し
家族構成:ご夫婦・お子様二人・ご両親
昔ながらの活気のある商店街で、代々氷屋さんを営んでいらっしゃるM様。
そんなM様の邸宅は店舗+オフィス併用の二世帯住宅。ご家族のほか会社のスタッフさん、お客さん、ご近所の方など、たくさんの人が集まりいつでも賑やかな雰囲気です。
お引渡しから半年と少し経ったある日、お忙しい中お時間をいただき、家づくりを振り返ってのお話を伺ってまいりました。
見た目に楽しく美味しいお煎餅は、奥様のご実家のお煎餅屋さんのものだそうです。
いつも温かなおもてなしをいただき、ありがとうございます。
インタビューの様子。高天井の明るいダイニングにて。
元々M様のご両親の住居兼ご家業の店舗だった邸宅の建て替えをお考えになったのは、東日本大震災がきっかけでした。地震での被害はほとんどなかったものの、既に築57年を迎えていた住まいに不安を感じたと言います。
当初は補強工事も検討されていましたが、市の補助金を利用してもそれなりの費用がかかることがわかり、建替えを選択されました。
「昔からこの土地で長く商売を続けてきて、お得意様も周辺にたくさんいます。これからも50年、100年、ずっとこの街で仕事を続けていきたい。両親も70代を迎え、高齢になってからでは建替えの負担がますます大きくなることを考えると、今がそのタイミングだと考えました」
ご主人はお忙しいご家業の傍ら、ご家族の将来を守るための家づくりプロジェクトをスタート。書籍や新聞などで情報収集を開始しました。
駅に近く商店が立ち並ぶM様邸の周辺は、防火地域に指定されたエリアです。
防火地域では通常、鉄骨造やRC造(鉄筋コンクリート造)で建築することが一般的。しかし、氷屋さんというお仕事柄、鉄骨・RC造では結露が問題になることを踏まえ、木造で建築出来る方法を探していらっしゃいました。そんな中、弊社が採用する「耐震構法SE構法」と出会ったそうです。
SE構法について「木造でありながら耐火建築が可能である上、長く住み続けることを考えると、構造計算を全棟実施していて耐震性に優れている、ということの安心感と、ラーメン構造かつスケルトンインフィルにより、間取りの可変性が魅力的。これでいこうと思いました」とご主人。
様々な工法を調べ上げ、研究なさった末の結論でした。
建替え前のM様邸。長年地域に愛され続けている町の氷屋さんは、暖かな雰囲気の佇まいが印象的でした。
研究熱心なM様の家づくりファイル。クリッピングした新聞や雑誌、WEBの記事などをまとめたこの大きなファイルが、全部で三冊もあるとか!中には弊社のブログ記事もあり、蛍光マーカーを引いて熟読して下さっていました。ありがとうございます!
M様が弊社に初めてお越しくださったのは、SE構法の供給元であるエヌシーエヌさんと共に2012年春に開催したセミナーイベントでした。そして、様々な会社を廻ってプランの提案を依頼する中で、弊社へ設計相談にお越しくださったのは、2013年1月のこと。建築を依頼する1社を決めるまでに、納得いくまでじっくりと時間をかけて検討されていたことがわかります。
しかし、初めてのご相談からご契約まで約1か月と、ほぼ即決。決め手となったポイントを伺うと「会社選びの中で、様々な建築雑誌や本を読みました。その中で、テラジマさんの物件の写真を目にする機会が度々あり、外観デザインが気に入っていてぜひお願いしたいとずっと思っていました。そうした(デザインの)フィーリングが一致したことと、コンサルタントの原さんの細やかな対応が大きいと思います。かなり多くの要望を伝えましたが、それらを聞き逃さず、細かく拾ってプランにまとめてくれました。希望通り、かつ想像を超えたプランの提案でした」
M様のご要望は、まず美しい外観デザイン。例えば、軒を長く取り、どことなく和を感じさせるモダンなデザイン、軒の下は板張りにすることなど、具体的なイメージをお持ちでした。様々な制約の中で、M様のご要望を可能な限り形にしたデザインとコンサルタントの丁寧なカウンセリング、誠実な対応にご納得いただいたことが、即決理由のひとつだそうです。
また、もうひとつの理由はそのプランの内容。
密集した商店街という環境から、他社からの提案は高層マンションや店舗が隣接した南側を塞ぎ、北側を開放するものがほとんどであった中、外部からの視線を遮る絶妙な角度に開口を設定し、すりガラスなどを上手に活用してプライバシーを守りながら南側からの採光を実現したプランに、ご夫婦で驚いたと言います。
「住んでみると本当に明るくて、以前の住まいと全然違います。本当にびっくりしました!」と嬉しそうな奥様と、それをニコニコと眺めるご主人のご様子が、とても印象的でした。
軒を長く取った、和モダンの外観デザイン。「本当はもっと長く軒を伸ばしたかったんですけどね (笑)設計の竹沢さんにお願いして限界まで伸ばしてもらって、満足です」とM様も笑顔。「2階の軒を最長1,8メートル確保できたので、地上から軒天を仰ぐと幸せな気持ちになります。」(M様)
竣工時の写真。ハイサイドライトから光が注ぐ、開放的なLDK。開口は大きいものの、外からの視線や近隣の飲食店の排気を気にすることなく、快適にお過ごしいただけているそうです。フローリングや天井の木は、弊社の施工物件を当サイトのWorksの施工例や見学会でご覧になり、気に入って取り入れたもの。全体的に温かみのある優しい雰囲気の内装に仕上がっています。キッチンは、以前のお住まいで愛用されていたものと同じメーカーで、長く使えるよう最高グレードのものを採用しました。
家づくりが始まると、まず敷地内に氷屋さんの仮店舗を設けて、M様は営業を再開。結果的に、着工から竣工まで、現場の様子を毎日近くで見守っていただくこととなりました。
「現場で気づいたことがあると、すぐ設計の竹沢さんに連絡したり、その場で職人さんに伝えたりしました。まるで現場監督!うるさかったかな(笑)」
と謙遜されるM様に実際の現場の様子をうかがうと「大工の熊谷さんのお仕事ぶりはとても丁寧でしたよ。近所の評判も良かったです。あと、竹沢さんに伝えたことがすぐに現場監督の川島さんに伝わっていて、こちらの意思が現場に反映されるのがすごく早かった。」とお褒めの言葉をいただくことができました。
竣工予定日は7月下旬。丁度その時期に毎年予定されている花火大会を皮切りに、氷屋さんの繁忙期が始まります。工事が業務に影響することを心配されていたそうですが、「工事は最後まで非常にスムーズでした。無事、花火大会にも間に合いましたよ!」とのこと。
設計と現場監督、建心会の職人さんとの連携の賜物と言えそうです。
ご両親が暮らす、二階LDK。お施主様世帯と基本的には近い仕様となっていますが、和室部分が部屋の多くを占め、より寛げる空間を目指しました。
1階オフィスに併設された、氷用冷凍庫。庫内は-30℃と低温のため、外気との温度差による結露など、通常の住宅では発生しない問題もある中、弊社の設計担当と専門の設計会社が連携して作り上げました。
夕景。一日中絶え間なく人が出入りするM様邸。ふんわりと灯る明かりが来客を暖かく迎えます。
ご家業の他にも、地域の青年会を率いての商店街の活動など、いつもお忙しいM様。
最近商店街がテレビや雑誌等で紹介され、活気が増していると耳にしたことがありましたが、その背景にはM様のご活躍があったのですね。
そんなM様に新しいお住まいでの過ごし方を伺うと、週末はご主人のご友人やご近所の仲間、お子様のお友達などを招くことが多いそうで、何と最大43人ものお客さんを集めておもてなしされたことがあるのだとか!高天井の開放的なリビングはご友人にも好評だそうで、暖かくなったら広々としたバルコニーをアウトサイドリビングにして、再度パーティを開くことを予定されているそうです。
暖かく誠実なお人柄のM様を中心に多くの人が集まり、町に活気をもたらす新しい取り組みが生まれる、その交流の場としてお役立ていただけているようです。
家づくり全体を振り返り、これから家づくりを始める方へのアドバイスを伺うと、「全幅の信頼をおける会社を選ぶことが重要。家づくりにはお金も時間もかかるだけに、満足度が変わります。」とM様。
ご自身で家づくりを研究され、様々な会社に足を運び、納得のゆく会社に任せることができたからこそ、忙しかった家づくりとお仕事の両立を乗り越えることができたのだそうです。そして現在も新しい住まいに「満足しています」と嬉しいお言葉をいただきました。
これからも、M様邸が町の発展と共に長く愛される住まいでありつづけることを祈るとともに、M様のご信頼に沿えるよう、一層励んでまいりたいと思います。
M様、この度は貴重なお話をお聞かせいただき、誠にありがとうございました。
コンサルタント:原
設計:竹沢
施工管理:川島
店舗併用、二世帯、防火地域内の木造建築の規則、構造計算は適合性判定を受けた特殊な計算を用い、仮店舗の設計、申請、仮店舗の建設、母屋の解体、着工と、実に様々な要素が複雑に絡んだ難しい案件だったと思います。そんな中で、常に中心に立ち、こまめに現場に足を運んで頂いたお客様に感謝したいと思います。