東京都世田谷区 Y様/2015年 お引渡し
家族構成:祖母・母・夫婦・長女
4世代が暮らすY様邸に伺ったのは、秋の風とあたたかな日差しが心地よい休日。「朝からまってたよ!」と元気にお迎えしてくれたのは、Y様ご夫婦 長女のOちゃん。かわいい大歓迎と素敵なおもてなしに感激しつつ、新居での暮らしについてお話を伺いました。
ルーバーから顔を出すシンボルツリーの「モチノキ」が目を引く外観。
奥様のお母様とお祖母さまがお住まいだった、昭和13年に建てられた立派なご実家。古いけれど愛着があり、大切に住まわれていたそうです。
「台風が来ると、母は寝ずに家を見まわったり、屋根の修理を自分でしていたんです。やはり心配でしたね。」と奥様。そこへ2011年の震災。ご実家の建て替えを決意されたそうです。
建て替えを提案した際、お母様のご希望は「庭の緑を残す」こと。Y様邸のお庭には沢山の木々や植物があり、母屋と共に先代から大切に受け継がれてきた、愛着のある空間でした。
「新しい家になっても、この家で受け継いできた息吹はなくしたくなくて」とのお母様のご希望を叶えるべく、まずは依頼先探しを始められたY様。
元々家やインテリアがお好きな奥様は、「自由度に制限のある大手ハウスメーカーではなく、設計事務所にお願いしたいと思っていたんです。」一方でご主人は「これからずっと住む家だから、施工に不安があっては困るなと思って。」と、デザインや設計力と施工力が両立した会社を探されたところ、インターネットでテラジマアーキテクツを見つけて下さったのだそう。すぐにお問合せをいただき、設計相談にお越し下さいました。
「(コンサルタントの)原さんのソフトな人柄が好印象でした。質問への答えもすぐに返ってきたので、信頼できるなと思いました。打合せを重ねる度に不安が消えていったので、ぜひ一緒に家を作りたいと思って、テラジマさんにプランをお願いしました。」と奥様。ご主人が寒がりとのことで、耐震性・断熱性に優れたSE構法にもご共感いただき、Y様との家づくりがスタートしました。
空間をゆるやかに横切る通り土間。家族やご近所の方との会話がはずみます。
「母のたっての希望だった、庭を残すこと。それから古い家の床柱・梁・建具をなんとか残したかったんです」とお話下さった奥様。他社では断られることも多かったそうです。「そんな中、原さんと(設計の)池田さんが家を見にきて下さり、『1ミリも庭の木を切りたくないのなら、その方法を考えるのが私達の仕事です。』と仰って下さって。本当にうれしかったです。」とお母様が続けてくださいました。
家が新しくなってもそこにある息遣いを大事にしたいという思いを汲んだプランは、通り土間が家族を繋ぐ家。
「昔の家の母屋と離れを通り土間がつなぐようなプランで、昔の家の良い雰囲気を残して下さっていて。ひと目で気に入りました。」とお母様。土間と既存のモチノキをそのまま活かした外観プランはそのまま、生活スタイルに併せて間取りを組み直し、いよいよY様の理想の家が具現化されていきます。
1階和室。梁や欄間は以前の家のものを再利用。
2階キッチン。吊り戸棚のガラスも以前の家のもの。
階段ホール上部にも古い梁を再利用し、空間のアクセントに。
お母様は庭のお手入れのため、現場監督さながら(!)何度も現場に足を運んで下さったのだそう。特に棟梁とはお茶友達・メール友達になって下さるほど、職方をねぎらって下さいました。「本当にみなさん気持ちの良い方たちで。自然発生的に良い関係を築けたんですよ」とお母様。「現場監督の川島さんが職人さんと池田さんとのパイプ役になって下さって、上手くバランスを取ってくれていたので、安心してお任せできました」と嬉しいお言葉も。ご主人も、「職人さん同士が仲が良く、雰囲気・空気感がとても良かったですね。建心会のつながりが、家づくりに生きていると感じました。もちろん皆さんの仕事ぶりはとても素晴らしく、仕上がりにも大満足です。」とお話下さり、竣工後には担当した全スタッフと職方、その家族まで竣工パーティーにご招待くださったほど!(職方も竣工後のお宅にお邪魔する機会はそうありませんので、Y様のお心遣いに、一同感激しておりました!)「建築中に何度も現場を見に来ていたので、完成してからも日々のふとした瞬間に『ここは○○さんがつくってくれていたな』と、昨日のことのように思い出します」と奥様。
スタッフ・職方にとっても、心温まる思い出深い家づくりとなりました。
この土地で何十年も大切に育まれてきた大きなモチノキを始めとした様々な植栽が彩る、美しいアプローチ。
豊かな水を湛える井戸。
通り土間の先の庭。先代から受け継いだ木々が豊かに茂ります。
大きな織機のあるアトリエは、親子三代の創作スペース。
「家づくりは総合芸術」とおっしゃるお母様。「住むほどになじんでいく家ですね。当初は気付かなかった、小さな気配りに気付かされるんです。」
一番のご希望であった、庭の木の保存。前面の道路から見える立派なモチノキは、この地に根付いたご一家の歴史を雄弁に語ります。
親子三代が創作スペースとして利用するアトリエは、1階の玄関近くに位置し、プライベートな空間は確保しながらも、土間を介してその他の空間とゆるやかに繋がります。
庭の植物で室内を彩ったり、ご友人を招いて素敵なテーブルコーディネートとお料理でおもてなしをされたりと、人と人とのつながりを大切にされながら、新居での暮らしを楽しんでいらっしゃるご様子が伝わり、大変嬉しく思いました。
新生活が始まり、環境が変わることを心配していたお祖母さまも、「大きくてきれいだね」ととても喜んで下さったそう。
Oちゃんも自分の部屋がお気に入りで、宝物をたくさん見せてくれました!ねこちゃんもお気に入りの日向ぼっこスペースをみつけて、一番楽しんでいるのでは?と、Y様の新居では、明るい笑い声が絶えません。
「家にいるのが、毎日楽しいんです。空が見える・月が見える・庭が見える。すごく豊かな気持ちになります。」と奥様。2階の大きなテラスにはあえて何も置かずに、アクティブに使えるフリースペースとしてご活用中とのこと。アウトドア気分でテラスで夕食を食べたり、お酒を飲んだり。
これからライティングを変えたり、いろいろ計画があるので楽しみ!と、笑顔でお話下さいました。
「この家にどんなに感動しているか、一晩中話しても足りないくらい!」とお母様。「壊して新しくするだけではなく、先人が残した良いものをいかにして残すかを一生懸命考えて下さった。その気持ちに本当に感謝です。」
庭の石釜で本格ピザ作り!とってもおいしいそうです^^
テラスでアウトドア気分。
家族団欒のひと時。「雨の日ですら楽しいんです。」と奥様。
インタビュー時の様子。奥様の手づくりパンと、お母様お手製のメロンシャーベットでおもてなしいただきました!とってもおいしかったです^^
最後に、奥様から頂いた嬉しいメールをそのまま、ご紹介致します。
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室内にいるのに、季節や光を感じながら豊かな気持ちになる住まいに感謝しています。大切にしてきた庭を残し、窓から見えるその景色は、みずみずしい緑に囲まれ都内とは思えない別荘地の様な気分にしてくれます。プライベートがありながらどこにいても誰かの気配を感じ、笑い声や「ただいま」「ごはんだよ」などの声を聞くことができるのは家族として幸せなこと。当たり前のことを素敵に感じさせてくれる家です。
前の家で使われた建具を利用したインテリアは懐かしさと心に馴染む空間を作ってくれています。一階の障子戸や千本格子戸などの和の建具は、庭との融合の中で昔の思い出が浮かんできます。大事にしてきた家に使用していた太い梁、扉で使用していた昭和ガラスなどをインテリアとして活用した部分が、新しい家に不思議と馴染みモダンに演出してくれています。井戸も残し、草木の水やりはもちろん、染め物をする際に使用できるように室内に井戸水を引き込みました。
新しくすることで壊すのではなく、先人の知恵を活かすことを大切にすることは、私達の生活をより豊かにしてくれています。
天気のいい日は、二階のテラスで夕涼み会と題して家族でパーティ。大人数のパーティ時は庭でBBQや新たに手作りしたピザ釜でアウトドア。
二階の吹き抜けのダイニングでは、焼きたてのパンを囲んだカフェのような時間。一階の和モダンの空間では、手作りの漬物と炊きたてのごはんを食す。
数え切れない程、この家は生活を楽しむ多彩なスタイルを持っています。
自宅に居ながら、旅行先で過ごすような喜びのある家。
家族全員、この家が大好きです。
みんなで手入れをしながら、家を育てていきたいと思います。
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皆さんの幸せそうな笑顔が、何より嬉しく、誇らしいインタビューでした。
「またいつでも遊びにいらしてくださいね」とのお言葉に甘えてまた何度でも訪ねたくなる、豊かであたたかいY様の家。
また皆様にお目にかかれることが、待ち遠しくて仕方ありません。
設計:池田
設計:川島
現場監督:原
敷地の調査の時に、お母様と庭木の話ばかりしていたら「植木屋さんですか?」と聴かれたのを思い出します。
Y様は好きなもの、欲しい形がとても明確にあり、打合せも楽しく進めさせていただきました。
以前のお宅に使われていた建具や材料等を再利用するなど、私も多くの事を勉強させていただき感謝しています。