現在では住宅用語としてすでに定着している「シンプルモダン」という言葉。テラジマアーキテクツでは、設計事務所として会社がスタートした当初より、"核"となるデザインコンセプトとしてこの言葉を掲げてきました。
シンプルモダンを直訳すると以下になります。
Simple=無駄のない・簡潔な
Modern=現代的
住宅においては、「直線基調で軽快感のある、機能的でシンプルなデザインの住宅」と解釈されています。
「シンプルモダンの家」と聞くと、整然としていてクールな印象から"かっこいいけれど住みにくい"といったマイナスのイメージをお持ちの方も中にはいらっしゃるのではないのでしょうか。
確かに、シンプルモダンという言葉だけをそのまま表現した住居の場合、あまりに簡潔で日々の生活には不向きになってしまう場合があります。
テラジマアーキテクツでは、見た目の美しさはもちろん、お客さま一人ひとりのライフスタイルや土地条件・周辺環境を考慮した間取りから、ストレスのない家事動線やご家族同士の距離感まで「機能性の高さ・ヒトが暮らす際の居心地の良さ」を、デザインする際に落とし込んでいます。
また、古き良き日本の色や木材、ディテールを取り入れることで、視覚的にも触感にもどこか「ぬくもり」を感じられるデザインであること。その2点が多くの方のご共感をいただいています。
「住んでみて、その良さに気がつく」。
美しいデザインと快適な暮らしが両立した家こそ、テラジマアーキテクツの考える「シンプルモダン」の家なのです。
東京都大田区 M様邸
2014年竣工
家族構成:夫婦
設計担当:山田
美術館の展示空間の代名詞として用いられるホワイトキューブは、近代社会に入り美術館が公共化した頃から用いられるようになりました。一般市民が美術を鑑賞する空間として、またあらゆる作品に対応出来るように、シンプルで何もない空間を求めたことから造られた独特の空間構成です。
住宅で用いられるシンプルモダンも、ホワイトキューブとどこか似た考え方から使われていると思います。美術館では作品が主役ですので、作品が引き立つように様々な装飾を削ぎ落とした空間となりますが、住宅ではそこに住む方が主役。ただ何もない空間という訳には、もちろんいきません。
住宅は、竣工した時が終わりではなく、むしろ始まりだと思っています。そこからお客さまのライフスタイルに合わせて変化していく空間なのです。そのことを考慮して、可変性と柔軟性を持たせた空間が「シンプルモダン」であると私たちは考えています。
住宅建築は竣工が完成ではないと考えております。
クライアントが住み続ける中で、生活の変化に対応できるような緩衝領域をもった設計を心掛けたいと思います。
こちらの施主さまは、建築やインテリアへの関心を強く持っていらっしゃいました。都心という立地でどのように「光」を綺麗に取り込むか、無駄なスペースを作らずに見せ場ともなる階段の位置をどこにするか、無機質なグレータイルの床をどう取り込むか、など最初のお打ち合わせ段階からご希望があり、個性的で豊かか感性をお持ちでした。
その感性を取り込んだ住宅に設えるために、常に内部と外部の関係性をシンクロさせながら計画を進めました。
インテリアへのこだわりも持たれていたため、お引き渡し後、お客さま自身で空間をアレンジして楽しめるように、空間の余白を意識しながら設計を行いました。その計画の中で、丁寧に造りこんでいった項目をいくつかご紹介したいと思います。
東側に道路、南側には隣家の敷地延長の専用通路が位置していたことから、道路側には大きな開口を、南側にはLDKと平行にバルコニーを計画。道路側の開口は、お客さまのご希望により、ガラスブロックを取り入れました。
半透明のガラスブロックを用いることで、プライバシーを確保しながらも柔らかい光で包まれた居住スペースが生まれたのです。
外側と内側の境にあるガラスブロックの開口は、外観の意匠性と内部の居住性を高める役割を果たしています。ガラスブロックの特徴を最大限に引き出すため、外観、そして隣接する内部は共にシンプルに設えました。
ご主人のご希望によって設計されたルーフバルコニーです。当初は、ご主人の「憩いの場」として計画されましたが、お引き渡し後、ご主人の手により見事にアウトサイドリビング化したバルコニーに。ここは、ご家族で朝食をゆっくり楽しむスペースへと変化しました。
広々とした屋外スペースは住まう方にとってアレンジしやすく、日々の生活に奥行きをもたらす豊かな空間となります。
コンクリートの質感など、無機質な空気感を好まれたお客さまが選ばれたグレーのタイル。
モノトーンなインテリアに少し木の温かみをプラスすることで、よりグレータイルの質感を引き立たせています。
右写真は、階段と合わせてシンプルにデザインしたキッチン横の棚。お引き渡し後、お客さまの選ばれたオブジェが飾られたことでアート的な表情がプラスされ、印象的で素敵な空間に。
窓は、採光と通風を取り入れる大切なところ。緑豊かな別荘地では、ガラス張りのような住宅も考えられますが、都内の住宅地となるとプライバシーの確保も検討しなければならないため、窓の位置と大きさは最重要項目となります。
窓を検討するということは、余白となる壁をデザインすることに繋がります。白い壁は、窓からの光を柔らかく反射させる役割もあるからです。
リビングは勾配を持った高天井になっており、ルーフバルコニー側と南側に設けられた高窓からの光が、天井・壁・床へと明暗のグラデーションを生み出し、リビングスペースを柔らかに包み込みます。
世界でひとつだけの注文住宅、素敵なシンプルモダンの住居をお客さまと一緒に造りあげた経験は、私たちにとって大切な「宝物」となりました。