南東側に環境の良い大きな公園が位置する敷地条件と、海外のお客さまも訪問されるアトリエスペース。
この二つのご要望から考えたテーマは「緩やかに外部と繋がる住宅」でした。
アトリエは作業場であると同時に、多くの来客を迎えるギャラリーの役割を兼ねています。
プライベートとパブリックの分離、また暮らしのペースが異なるふたつの世帯の分離のため、まず玄関を分け、片方の玄関ホールがアトリエを兼ねる形としてゆったりと計画しました。
玄関へのアプローチは露地のように計画。格子の壁、庭でそれぞれ道路との間に結界をつくり、アプローチ空間を印象的に演出するとともに、外部の環境を穏やかに内部に取り込みます。
2Fには二世帯兼用のLDKを配置。そのリビング・ダイニングに沿うようにバルコニーを計画することで、室内外が一体に感じられます。
外の景色を取り入れ、外と緩やかに繋がるこの家には、いつも清々しい空気とゆったりとした時間が流れています。
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ボリュームごとに異なる素材は配色を取り入れ、和モダンを表現した外観デザインです。
立体感のあるデザインは、抜けの良い角地の立地に適しています。
手前のルーバーの横を通ると母世帯、右手奥には子世帯の玄関があります。
子世帯の住宅に至るアプローチ。砂利を敷いた上に石をリズミカルに配置して露地のような空間を演出しています。華やかな照明や植栽を使わない、シンプルで落ち着いた演出ですが、十分に来客の気持ちを高めてくれるアイデアです。
日本刺繍のアーティストである、お施主様のアトリエです。玄関土間横の小上がりのスペースに作りました。様々な道具や材料を収納できる大きなクローゼットと、作品を飾れるピクチャーレールを備えています。大きな窓からは終日自然の光が入り、制作作業のしやすい柔らかな明るさを保っています。
玄関を兼ねたギャラリースペース。
日本刺繍の作品が映えるよう、また国内外からの来客をもてなすため、和の要素の強い空間に仕上げています。作品を美しく見せ、昼夜ともに優しい雰囲気を保てる照明計画にこだわりました。また、小上がり部分は作品を格納できる収納スペースになっており、作品の入れ替えも容易に行うことができます。
海外からの来客に喜んでいただきたいというお施主様のご要望により設けた、和モダンデザインの来客用手洗いスペース。玄関近くに設置し、小上がりでのおもてなしに活用できるようにしました。
子世帯のリビング・ダイニング。スキップフロアでそれぞれの空間を隔て、抜けの良さを保つ工夫をしました。奥には周辺の桜並木を切り取るピクチャーウインドウがあり、季節の彩を楽しめます。リビング・ダイニング全体をL字型のバルコニーが囲む開放的な空間です。
テレビの背面側はダイニングの収納棚として活用するなど、空間を有効に活用し広々と使える工夫をしています。
スキップフロア上段のダイニングスペース。二面の大きな窓があり、自然光がたっぷりと注ぐ空間です。横長の大きな窓は、邸宅の正面に広がる桜並木を気兼ねなく楽しめるよう、外からの視線が気にならない高さと大きさに設定し、かつ桜が最も美しく見える位置を計算して作ったピクチャーウインドウです。
ダイニングに隣接したキッチンは、正面にバルコニー、右手に桜並木を望むことができる気持ちのいい空間。コノ字型の作業のしやすいレイアウトも魅力です。コンロを奥に設置したことで、レンジフードがダイニング側から目につきづらくなり、すっきりと見えます。