計画地は、広さにゆとりがあるものの建蔽率・容積率の制限が厳しい敷地。建物を建てられない「余白」となる部分を、どう生かすかがプランニングのテーマでした。
そしてオーナーさまの最も大きなご希望は、明るい家をつくること。両隣に建物が近接する環境で、開放性の確保が課題でした。
そこで、屋外の「余白」に中庭とテラスという二つの役割を持たせて配置。
中庭は「光井戸」として敷地中央の光の届きにくい場所に自然光を届ける働きをします。そして、テラスは一階LDKと隣り合う配置とし、外壁で囲むことで、リビングの延長として日々の団らんや遊びを愉しむ空間となりました。壁が隣地からの視線を遮り、テラスはもちろんリビングにいても外からの干渉を気にする必要はありません。
内装は、グレーを基調にブラウンを効かせたモダンで上品なデザイン。木を多めに取り入れることで、どことなく和モダンの雰囲気が感じられる、落ち着いた印象に仕上がっています。
ハイクオリティビルド認定(2024年)
板張り天井の玄関ホール。長手方向に伸びていくように木を貼ることで、突き当たりにある坪庭の緑に視線が誘われます。空間の抜けの良さ、奥行き感が強調され、伸びやかに感じられます。
石を貼った壁の質感を強調するように、ダウンライトは壁に寄せて設置。上質感を際立たせます。
石の壁はガラスの扉の奥にあるリビング・ダイニングへと続いています。
2層吹き抜けのリビング・ダイニング・キッチン。中庭側とテラス側の2面に大きな開口部を持つ明るい空間です。
リビング部分はスキップフロアとして一段低く設定することで、ソファに腰掛けると一層天井が高く、ダイナミックで広がりのある空間に感じられます。
テレビ背面壁にはナラ材で製作したリブ材を、暖炉の背面には大判のタイルを使い、二つの素材の組み合わせで華やかに仕上げました。リブ材には隣り合う階段の段板と同じ素材を使い、塗装して色を揃えることで統一感を出しています。
アイランドキッチンはリビングのテレビボードと同じウレタン塗装で統一感のある仕上げに。壁面収納はメラミン仕上げで清掃しやすく、使い勝手よく仕上げました。レンジフードはバックセットの中に納まるよう計画し、凹凸のないすっきりとしたキッチンになりました。
アイランドキッチンの奥にはパントリーが併設。大容量のバックセットと併用することで、調理器具や食器、食材を余裕を持って収納できます。
ナラ突板貼で仕上げた段板は、隣り合うテレビ背面壁のリブ材と同素材・仕上げで揃えました。1、2段目のひな壇にはタイルを貼り、広がりのあるデザインに。リビング側からの行き来がしやすくなるほか、スキップフロアと同様に腰掛けることもできます。踊り場から見下ろす空間全景は圧巻です。
5mの外壁に囲まれたテラスは、リビングの延長として活用することを想定して計画しました。壁は隣家からの視線を遮りながらリビングへの採光を妨げない高さに設定しています。
ここは本来建蔽率の制限により建物を建てることができない部分ですが、室内同様に活用できる空間になりました。
グレーのタイル張りで仕上げた、造作バスルーム。隣の洗面室との間はガラスで仕切られています。
スリット窓は中庭に通じています。壁に寄せたダウンライトの柔らかな光と自然光で、落ち着いた寛ぎのひと時を堪能できる空間になりました。
ヘッドボードのないベッドを使用される予定とのことから、寝室の壁には合皮貼りのヘッドボードを設置。立体感のある布団貼り仕上げで、空間の印象が一層上質に感じられます。着脱可能なマジックテープをつけ、メンテナンスしやすいように配慮しました。
テレビボード下や梁の上に間接照明を仕込み、柔らかな立体感のある夕暮れの景色を描きました。
揺らぐ暖炉の光が寛ぎを誘います。