大工
木下 和哉
同級生の父親だった工務店の社長に誘われ、18歳で大工の道に。親方の下で修行を積み、20歳で独立し、24歳で木下工務店を設立。現場監督の今村いわく「ものづくりが好きで研究熱心な方。厳しい修行経験を積んだ本物の大工さんです」。
大工の仕事は、現場で建前(骨組み)をつくり、外壁や屋根の下地、床や壁、天井の下地をつくることです。木造建築でいえば、コンクリート基礎や屋根・外壁・内装の仕上げ以外のすべてに携わるポジションです。そんな大工は、修行と経験がものをいう世界。私も18歳でこの道に進み、一から経験を積んできました。大工は基本的に、こうやれとあれこれ教えてくれないんですよね。なので私も、自分で諸先輩方の仕事ぶりを見て覚えて、自分なりにやって、だめだったら違うやり方を試して、という風に仕事を覚えていきました。
当時親方に「人より稼げ」という言葉をいただいて、それは今でも心に残っています。仕事を始めた若い頃、現場は年配の人ばかりだったので、文句や嫌味をたくさん言われたんです。そんなときに「ムカついたら、仕事を覚えて人より稼げ。そうすれば誰も文句は言わない」と言われて。それからは必死に仕事に励みました。今となっては懐かしい思い出話です。ただ、あの言葉がなければ続かなかったかもしれません。
実は、仕事のやりがいと聞かれると、思い浮かばないんです(笑)。今までずっと当たり前のことを、普通にやってきただけで、そんな大義名分を考えたことがなくて。ただ、やはり自分の仕事の成果として、家ができあがったとき、そしてお客様に喜んでもらったときはうれしいですね。ほとんどの方にとって家を建てるということは一生に一度のことになりますし、それを作っているという自負はあります。ただ、気負いせずに、いつも通りに当たり前に作業をしていくことをいつも心がけています。
最近はプレカット工法といって、木材を事前に工場で加工したものを現場で組み立てる現場がほとんどです。しかし大工という仕事は、昔ながらの木を見る目や技術があってこそだと思います。私も基本をしっかり身に付けているからこそ、自信を持って仕事ができています。
テラジマアーキテクツの方々は、いい意味で「若い」と思います。これは建築業界ではとても珍しいのではないでしょうか。古い固定観念もなく、常に新しいことを模索しているような印象があります。実際にみなさんと年齢も近くコミュニケーションが取りやすいのも嬉しいですね。また、普通設計事務所は設計のみを行い、施工は工務店に任せることが多いため、設計者の意図や細かな変更が施工会社の監督に伝わっていないケースもあるのですが、テラジマアーキテクツでは設計と施工管理を一貫して行っているのでそういったことがなく、スムーズに気持ちよく仕事ができています。
現場では、建心会によって気心知れた職人さんたちと働くことができるので、コミュニケーションや連携がうまく取れていると思います。メンバーとは仕事以外に交流する機会も多く、普段仕事場では真面目な方が、飲みの席で新橋の親父みたいに酔っ払っていたりしておもしろいですね(笑)。