お施主様がリノベーションを決意されたのは、借家だったこの部屋に住み始めて約4年経った頃、貸主から財産の整理のため、マンションを売却するというお話があったことがきっかけでした。
交通の便がとても良いことや、マンションの管理や組合の体制がしっかりしていることをとても気に入っていたため、I様はこの部屋の購入を決定。
しかし、築30年以上の古い物件のため全体的に老朽化が進んでおり、そのまま住むには不満な部分が多くありました。例えば換気設備や排水の悪さ。デッドスペースがおおく余計な段差があるなどの構造への不満。そして、周囲を10階建て以上の高い建物に囲まれており、1階に位置するI様の部屋には光が届かない、という都心ならではのお悩みみありました。帰宅して玄関ドアを開くといつも真っ暗で、まず照明のスイッチを探さなくてはならないことが、一番の不満だったそうです。そこで、フルリノベーションを施すことでこれまでの不満を全て解消し、気持ちよく暮らすことの出来る「理想の家」に生まれ変わらせることにしました。まずは、あらゆる問題点を羅列するところから始め、徹底的に改善を測ったのです。
そして、浮かび上がった様々な問題点を改善するために、I様がリノベーションで希望されていたことは、以下の3点でした。
まず、スケルトンにして間取りや設備の不満を全面的に解消すること。
換気や採光について、できるだけ配慮すること。
そして、廊下を含めて無駄なスペースを出来るだけ作らないということです。
換気や排水の問題については、新しい配管や機能的に優れた設備に入れ替えることで解消することができます。
もう一つ気になっていた、水回りの余計な段差や天井の低さ、デッドスペースのもととなる梁や太い柱などの構造の部分についても、スケルトン状態にして一から作り直すことで、望み通リの使いやすい形を実現することは可能です。しかし、玄関に光を取り入れることや、出来る限り容積を使い切り、空間を無駄にしない工夫については、プランニングの際にじっくりと話し合いを重ね、検討しました。
結果として、写真のように元の間取りが想像つかないほど、全く異なる空間として生まれ変わりました。
まず、設備は全て一新。換気設備や配管のみならず、コンセントの数や旧式だったテレビ端子も全て見直しました。玄関には、人感センサーを設け、ドアを開くと自動で点灯するため、夜間に奥様やお嬢様が帰宅するときも安心です。
そして最も苦心したプランニングにおいては、出来るだけ壁を無くし、代わりにパーテーションを設けることで、壁厚の無駄さえも省きました。2LDKの間取りですが、パーテーションを動かせば1フロアーに姿を変え、過ごし方に応じて部屋を広く使うことが出来るよう工夫しています。パーテーションレールの上部をガラスにすることで明るくなり、区画を目立たなくしました。
一番のお悩みであった昼間の玄関の明るさについては、ガラスパーテーションにより十分な採光を実現しました。柱に合わせた扉サイズなど、収納した場合の扉の位置を緻密に計算し、出来るだけ空間を広く使うことができるように配慮しています。
天井も、一部スラブ現しにすることや配管ルートの見直しにより、約2.8mまで高くなり、開放感が格段に高まりました。
都心の制約の多い居住環境において、本当に快適な家をつくるには、詳細な計画を立てることが欠かせません。
I様の徹底したこだわりと、手間や時間を惜しまず検討を重ねた緻密な計画が、I様の「理想の家」を実現させました。